授業で利用する講義室や、通勤通学中の電車やバスの座席、または乗車口など、
毎回安定して同じ場所でないと落ち着かないことってありませんか?
複数の製造現場で共通していたことですが、
毎日休憩室を利用していると、自由席にもかかわらず、
多くの人が、空いていれば同じ席にいつも座っています。
だからといって、周囲のメンバーと談笑しているわけでもなく
ひとりひとりが黙々と過ごす時間・・・
製造業に携わるようになってから、私には不思議な光景でした。
正解のあるお話ではありませんが、
今回は同じ座席に座りたくなる行動原理について考えてみたいと思います。
現代社会を生きる人々は、趣味趣向が多感であり個性があります。
しかし、太古の昔を生きる人々のアイデンティティは、
現代のような多感の中で生まれるものではなく、
集団生活の中で “定位置を決めてそこにいる” ということが、
アイデンティティのひとつだったようです。
その頃の、人々が群れで生活をしていた時の記憶をもとに、
脳や身体を通じて、自然と身体が反応してしまうようです。
人間は、特に大きな状況の変化がない限り、現状維持を望む傾向があります。
その背景には、損失回避性という
“利益から得る満足度より同額の損失から得る苦痛の方が大きいと判断する”
という心理作用が働いているからです。
例えば、買い物をする時、同じ価格帯の商品があったとしても、
それまで買ったことのあるメーカーを選ぶことはありませんか?
今まで買ったことのない商品は、もっと満足度が高いかもしれない…
それでも、その知らない商品を選ぶ必要性に迫られない限りは、
過去に経験したことの範囲内での選択を望む傾向があります。
自然界で考えれば「未知の食べ物にはどのような毒が潜んでいるかわからない」と考え、
普段あつめる食べ物を好む動物も多いでしょう。
決まった席を選ぶという行動は、
そこに座ることに安心や安全の価値をもっているのではないでしょうか。
これまでの2点は潜在的な要因でしたが、
ルーティンの場合、明確な意思をもって席を選んでいることが伺えます。
ルーティンは「日課」や「決まった手順」または「お決まりの所作」などの
意味をもって使われる言葉ですが、
シチュエーションごとに意味をそれぞれ持ちます。
今回の様子については、気持ちがリラックスするなどの
メンタルコントロールとしての側面をもったルーティンだと思います。
共有スペースなので、指定席のようにその場にこだわりすぎることや、
必要以上に場所取りをするなどの行為はNGですが、
同じ席を選ぶこと自体はダメなことではありません。
また、多くの人が同じ席を選ぶことが多く見受けられるので、
Aさんが席に座る
Aさんの座ったところは、Bさんがいつも座っていたが、Bさんはそれを見て席を変える
Bさんが座る席を変えたので、その場所によく座っていたCさんが…
という現象を時々目にすることがありました。
同じ席に座りたくなる習性のおかげで、本来、指定席ではないものの、
知らずに誰かの ”いつもの席” に座りトラブルになりそう・・・
と心配になることはありませんか?
譲り合いが大前提ではありますが、自己防衛として、
新しい環境に入っていくときは、最後尾や最終の行動をとって、
普段の皆さんを観察した上で、座席を選ぶのもひとつの手段かもしれません。
生きていく上で、臨機応変に対応しなければいけないことは多々あります。
現状維持から変化を選ばなくてはならなくなった場合、
変化を変える幅をなるべく小さくしてあげることがオススメです。
緩やかな変化で時間をかけて自分の許せる範囲を広げていくと、
今までの習慣はそこまで気にならなくなると思います。
自分にとって、変化させた方がよいことと、
変えないほうがよいことの見極めが重要だと思います。
明日から、あなたはどこに座りますか?