静電気の仕組みと工場での静電気対策

冬になり、空気が乾燥してくると “静電気” が起きやすくなります。

洋服を脱ごうとしてバチバチと静電気が発生した経験は、

多くの方がお持ちではないでしょうか?

この静電気は、主に電子機器を製造する工場では

製品の故障を招く原因となります。

そのため、工場では静電気を発生させないための仕組みがあります。

今日は静電気の仕組みと、工場での静電気対策をご紹介します。

そもそも静電気とは?

人間の体を含め、どんな物質もプラスとマイナスの電気を持っています。

通常は、このプラスとマイナスの電気量が釣り合った状態ですが、

摩擦などの要因で電気量のバランスが崩れることがあります。

このプラスとマイナスが偏った状態で帯電することを静電気といいます。

バチッとなるのは静電気ではない?

バチッとなるのは、静電気が放電された時に生じる現象のひとつです。

静電気は日常生活の中で知らないうちに少しずつ放電されていきます。

例えば、夏の時季は湿度が高いため、

空気中の水分を通して静電気は自然と放電されています。

しかし、冬は乾燥し、空気中の水分が少ないため、

静電気が放電されにくくなり、体にたまっていきます。

この状態で金属製のドアノブなど、電気の流れやすいものに触れると、

体にたまった静電気がドアノブに一気に流れます。

この瞬間、急激な放電が生じ、バチッとした痛みを感じます。

なぜ静電気で電子部品は壊れてしまうのか

電子部品が静電気によって破壊されることを “静電破壊” といいます。

この静電破壊は、帯電だけを理由として発生する現象ではありません。

帯電した静電気が放電することで、通常より多くの電流が回路上に流れ、

それに伴って発生した熱が電子部品を破壊するのです。

工場での静電気対策

工場では様々の方法で静電破壊を防ぐ仕組みを取り入れています。

アース(接地)をとる

手首や足首に装着するリストストラップを用いて、静電気を逃がします。

また、作業台や作業エリアを導電マットでアースと接続し、

静電気を逃がす仕組みを取り入れています。

イオナイザー(除電器)を使用する

イオナイザーを作業机に配置し、静電気の発生を抑えながら作業を行います。

イオナイザーとは

コロナ放電で空気を電離して、プラスとマイナスのイオン電荷を生み、

それらが帯電物体上の電荷を中和して静電気の発生を抑えます。

様々なタイプがあり、設置環境によって適切なものが選ばれます。

作業机に配置して使用するものですと、ファン(扇風機)が内蔵されたものを使用し、

その風によってイオン電荷を吹き出して除電します。

湿度管理を行う

一般的に湿度が65%を超えると静電気は発生しにくくなります。

加湿器等を用いて湿度管理を行いますが、湿度が高くなりすぎると、

結露やさびなど機器への問題も発生します。

そのため、適切な湿度を保ちつつ、他の静電気対策も併用していきます。

導電化商品を使用して帯電を防ぐ

作業着や工具だけでなく、作業棚や椅子、ボールペンなどの文具に至るまで、

工場では様々な導電化商品を使用しています。

帯電防止剤を使用する

工場で使用する物には、前述の導電化商品として手に入らないものも多くあります。

それらには、帯電防止剤を使用し静電気の発生を抑えます。

帯電防止剤とは

界面活性剤を主成分とする薬剤で、絶縁物に塗布することで、

表面にイオン性の付与や、親水性を付与して吸湿性を増加することができます。

定期測定を行う

工場での静電気対策は、導電化商品の導入や、

仕組み作りをして終わり…とはなりません。

定期的に全ての静電気対策が正しく機能しているか、

測定器等を用いて定期測定を行い、記録を残し管理をしています。